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子どものころの山本昭平さん(左)。択捉島の自宅庭で妹と=本人提供
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 港を振り返ると、飼い犬たちが、岸をうろついていた。

 船はゆっくりと、岸から離れていく。1匹の犬が、船上にいる飼い主の姿を追うように、海にザブンと飛び込んだ。

 6、7匹の犬が次々と海に入り、必死になって泳ぎながら、船に近づいて来た。

 そのうちの1匹と目が合った。

 「クンクン鳴きながら泳ぐんです。自分も連れて行ってほしい。そう訴えるような目をしていました」

 このままでは溺れて死んでしまう。海を泳ぐ犬の姿に気づいた船上の人たちが叫ぶ。「来るんじゃない!」「帰りなさい!」

 目に涙があふれた…

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